繊細さんの本などで知られるHSP(Highly Sensitive Person)は、良くも悪くも影響を受けやすく、子育てがうまくいかないときは悩みがち。HSPに詳しい心理学者とHSP当事者の漫画家がタッグを組み、分かりやすいイラストとともにHSPをはじめ、子育てに悩む人の心がラクになるヒント満載の一冊です。
『繊細すぎるHSPのための子育てお悩み相談室!』とは
『繊細すぎるHSPのための子育てお悩み相談室!』とはHSP情報サイト「Japan Sensitivity Research」の企画・運営者でもある心理学者の飯村 修平さんとHSP当事者として主に体験談を漫画にしている漫画家・イラストレーターである おがた ちえ さんが、「子育てをするHSPを応援したい!」という気持ちで書かれた本です。
159ページ。
2022年4月に株式会社マイナビ出版から初版発行。
『繊細すぎるHSPのための子育てお悩み相談室!』の著者
飯村 周平 さん
心理学者によるHSP情報サイト「Japan Sensitivity Research」の企画・運営者。2019年、中央大学大学院博士後期課程修了。博士(心理学)。日本学術振興会特別研究員PD (東京大学)を経て、2022年より創価大学教育学部専任講師。青年期を対象にした環境感受性の発達心理学的な研究を行っている。Twitter @Tokyo6Heart
おがた ちえ さん
漫画家、イラストレーター。HSCを育てるHSPママ。4コマやエッセイ、旅行漫画を中心に、HSP当事者として体験談をWebや雑誌等で執筆中。Twitter @ogachinpa
『「繊細すぎるHSPのための子育てお悩み相談室!』の内容と感想
はじめに
この本は「HSPの人の子育てを応援したい!」という気持ちで企画された本です。
そのため、はじめにHSPにありがちな10のケースが紹介されています。
自分にあてはまるかどうか見てみてください。
<HSPにありがちな10のケース>P4~13
初めての場所では周囲を入念に調べて行動する 新しいことを始めるときは一度立ち止まって考えてから決断する 生活に大きな変化があるとストレスに感じやすい 大きい音やまぶしい光、強いにおいに敏感で、ストレスに感じる 短時間にしなければならないことが多いとストレスに感じやすい 他人が怒ったり悲しそうにしたりしていると同じ気持ちになる。 親しい人が幸せそうにしていると、自分も同じ気持ちになる 明るい気持ちになる動画を観ると、人よりも幸せな気持ちが高まる 身の回りの細かいことにもよく気がつく 音楽や芸術のような美しいものを見たり聞いたりすると感化される
1章 HSPってどんなもの
この章では、主に4つが紹介されています。
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まずHSPを考える前にわたしたちは一人ひとり物事の受け止め方が違うこと
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その違いがどのように作られるのか
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自分がどの程度HSP的な要素をもっているかを確かめるためのHSP尺度の紹介
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HSPとは何か
心理学者の方が監修されているだけあって、かなり詳しいです。イラスト入りで分かりやすいとはいえ、本好きでも子育てで活字離れしていた私にとっては、お布団で読んだら眠気を誘うレベル…。詳しくは本書を手に取ってご自分で確かめて頂きたいのですが、ここでは章題にもなっているHSPってどんなものかを含めたこの章の6つのおさらいポイントをご紹介します。
- P46,47
1 感受性とは?
感受性とは、環境からの影響の受けやすさのこと。また、感受性は 高いか低いかのどちらかというものではなく、程度はグラデーションになっている。
2 感受性には個人差がある
物事の受け止め方、反応には一人一人違いがある。生まれ持った気質と、育ってきた環境の2つが関係している。
3 環境感受性とは
環境感受性とは、ネガティブおよびポジティブな環境の両方から影響を受けやすい特性のこと。周囲に良くも悪くも反応していまう。
4 DOESとは?
環境感受性を構成する四要素。
Dは「深い認知的処理」
Oは「刺激の受け取りやすさ、圧倒されやすさ」
Eは「共感的・感情的な反応の高まりやすさ」
Sは「ささいな刺激への気づきやすさ」
のことを指す。
5 子どもにHSPは遺伝する?
HSP特性である感受性の高さは、親から子にそのまま遺伝はしない。感受性の遺伝率は、他のパーソナリティ特性と同程度の約50%。
6 HSPって何?
ネガティブ・ポジティブな環境から影響を受けやすい環境感受性の高さゆえ、周囲の情報に敏感に反応する特性を持つ人のこと。
2章 自分の悩みを理解しよう
この章は正直、HSPの人だけでなく、子育てに悩みを抱える人、いや、もはや悩みをもつすべての人に知っていてほしいです。この章のことが頭に入っているだけで、心が軽くなる人がどれだけいるのだろう、そうと考えると、義務教育に組み入れるべきなのではないかとすら思います。
子育て中は、子ども中心の生活、ご近所・ママ友・親戚との付き合いなど、自分一人の生活の時には感じずにすんでいた、自分のペースで生活できないことに端を発する様々なストレスを抱えることになります。
ストレスは抱え込んだままケアしなければ、心や体に様々な症状となって表れてしまいます。
そうなる前に自分がかけているストレスを把握しましょう。本書では、厚生労働省公開の「職業性ストレス簡易調査票」を子育て中という状況を加味して編集した独自のストレスチェックシートが掲載されていますので、気になる方はぜひチェックして見てください。
このページをご覧になっている方はすでにストレスを抱えていると感じていらっしゃる方が多いのかなと思うのですが、実はそのストレスは、自分の考え方のクセ、特に事実を曲解してとらえてしまう認知のゆがみを把握し改善することでとってもラクに手放せるものがあるのです。
本書では代表的な認知のゆがみ10項目と、それによって子育て中にありがちな悩みの例、それを改善するためのポイントが詳しく紹介されています。HSP度高めの私にとってはどれも経験のあることばかりでした。子育て中の悩みを抱える方にはぜひ本をしっかり読んで頂きたいのですが、ここでは、私がポイントだと思うところを抜粋してお伝えしますね。
P54
認知のゆがみ(非機能認知)とは?
合理的でない考え方、誇張した思い込みなどの思考パターンのこと
例) 事実:ごみを出し忘れてしまった
→事実をそのまま受け止める
ゴミ出しを忘れてしまったので、次は気を付けよう
→ゆがんだ思考で受け止める
ゴミ出しを忘れてしまったので、私はダメな人間だ
P55~59 一部抜粋
認知のゆがみ 代表的な10項目と改善ポイント
ゆがみ① 白黒思考
物事に対して白か黒かで判断すること。
ひとつのミスだけですべて失敗と思ってしまう
ポイント できなかったことよりも、できたことに目を向ける など
ゆがみ② いきすぎた一般化
根拠不十分なまま、結論付けること。
たった一度のミスで、繰り返すだろうと考えてしまう
ポイント もう一度同じことをしてから判断する など
ゆがみ③心のフィルタリング
良いこと悪いことのうち、悪いことばかり目につくこと。
良いことを自分で認めることができません
ポイント 良いと感じた方にまず焦点を当てる。
ゆがみ④ マイナス思考
良いことがあったり、うまくいったりしても、自分でいいと思えないこと。すべて悪い方へととらえてしまう。
ポイント ほめられたことは素直に受け止める。
ゆがみ⑤ 論理の飛躍
相手の心を読もうとしすぎたり、現段階ではわからない先のことまで決めつけたりしてしまうこと。予測できないことなので結果的に空回りしてしまいます。
ポイント 事実以外のことは考えない
ゆがみ⑥ 過大解釈、過少解釈
良くないことや失敗に対しては最悪の結末まで広げて考えたり、逆にいいことには「まぐれ」「たいしたことない」と解釈したりしてしまうこと
ポイント 起きたことがすべて、その先は想像でしかない。
ゆがみ⑦ 感情に基づいた判断
感情をもとに判断をくだすこと。
自分の感情を根拠にしているので、その判断が正しいと信じて疑わない。
ポイント 感情で正当化してよいことと、悪いことを分別できるように。
ゆがみ⑧ 「~すべき」思考
自分や相手に対して、「こうあるべきだ」「~すべきだ」という考え方をしたり、期待したりすること。それが守られなかったときにストレスを感じてしまいます。
ポイント パーフェクトではなく、ベターで十分
ゆがみ⑨ レッテル貼り
自分や相手に対してネガティブなレッテル貼りをすること。凝り固まった思考につながりやすくなってしまいます。
ポイント 一度見つけたレッテル以外の根拠も考えて選択肢を増やす。
ゆがみ⑩ 誤った自己責任化
自分でコントロールできない出来事に対して、自分に責任があると考えること。全く関係ないことでも、自分と結びつけてしまいます。
ポイント 人の責任まで背負わないことに慣れていく。
⑦は少しわかりにくいかなというのと、これをうまくやらないと虐待につながりそうな重要なポイントだと思うので、詳しく例を説明します。
「感情に基づいた判断」の子育て中の例として挙げられているものがこちら
・こどもに「きらい!」と言われ、ひどく憤った。子どものご飯を用意しなかったけど、これくらいしょうがないよね。
こどもの言葉に傷つき怒ってしまうことがあるのは自然なことです。けれど、ご飯を用意しない、たたいてしまう、などが常態化して、行き過ぎてしまうと怖いですよね。どこまではよくて、どこまではいけないというのを考えるのは大切ですよね。
3章 自分自身や子育てについての悩み
HSPの親が特に悩む、子供との接し方や姿勢・自分自身のあり方について、お答えするケースが26も掲載されています。
代表的なものでいうと
・育児で自分の時間が十分に取れない
・叱り方がわからない
・どうしても他の子と比べてしまう
・うまく子どもを褒めることができない
とても参考になったので、ぜひ読んでみてください。
P113
育児に悩むということは子どもと真剣に向き合っているってこと
だからこそ肩の力を抜いて
その子の力を信じ見守れるようになること
それがHSPの目指す育児かなと感じています
4章 身の回りの人やサービスに対する悩み
親になるとぐっと増える人間関係、身の回りの人に対する悩みへのお答えが17ケース掲載されています。気になる方は本書をぜひチェックしてみてください。
例を挙げると、
・ご近所づきあいをどのようにすればよいか分からない
・子育てについてママ友と比較してしまう
・子育てについて、夫からの理解が得られていないと感じる
・どんな習い事をさせればいいのか分からない
P153
HSPの感性アンテナはささいな幸せを見つけるのも得意だし
問題を解決するための情報にも敏感です
HSPらしさを活かして家庭の苦難もしなやかに乗り越えていけたらなと思っています。
まとめ
この本を読んで、HSPとはどういうものなのか、HSPが抱えやすい悩みやその解決法を知ることができました。HSPの人に限らず、子育て中の方に限らず、悩みを抱える多くの方に読んでいただきたい良書でした!
子育てに悩んでいるあなた
自分はHSPだ、HSPかもしれないと思っているあなた
HSPや子育てに関心があるあなた
悩みを抱えているあなた
あなたにこの本をおすすめします。
著者の他の本
おがたちえ
「繊細すぎて生きづらい〜私はHSP漫画家〜」(ぶんか社)
「なつかしい日本を探し台湾」(ぶんか社) など
元公務員▶専業主婦▶二児の母
整理収納アドバイザー2級・クリンネスト2級を取得
“心地えぇなと思える暮らしに役立つ知恵をここに”をテーマにブログを運営しています。
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