鈴木裕介『我慢して生きるほど人生は長くない』の著者・内容・感想

くらし

生き辛いと感じているすべての人に読んでほしい一冊。仕事や人間関係、尽きることのない悩み、不安、イライラなど、我慢していることがスーッと楽になる秘訣知りたくありませんか。

鈴木裕介『我慢して生きるほど人生は長くない』の著者

鈴木 裕介(すずき ゆうすけ)

内科医・心療内科医。2008年高知大学卒。
内科医として高知県内の病院に勤務。
研修医時代に、近親者の自死を経験。そうしたことが二度と起こらないようにと、研修医のメンタルヘルスを守る自助団体「セーフディスクラム」を同級生と一緒に立ち上げ、一般社団法人高知医療再生機構にて医療広報や若手医療職のメンタルヘルス支援などに従事。

2015年よりハイズ株式会社に参画、コンサルタントとして経営視点から医療現場の環境改善に従事。2018年、「セープポイント(安心の拠点)」をコンセプトとした秋葉原 save クリニックを高知時代の仲間と共に開業、院長に就任。人々が持っ[生きづらいという苦しみ」や「根源的な痛み」、「喪失感」に寄り添いながら、SNSや講演などでメンタルヘルスに関する発信も行う。

Twitter:@usksuzuki

鈴木裕介『我慢して生きるほど人生は長くない』の内容と感想

はじめに

社会が豊かになると、人はやることがなくなり不幸になるというイギリスの哲学者がいたそうです。
今の日本には、一見普通に幸せそうに見えて、生きづらさを抱えて生きている人が相当いるのではないでしょうか。
そういう方たちのために、”他人によって必要以上に我慢させられることなく、真に自分らしく生きていくための方法”を心療内科医である鈴木裕介さんが書かれた本です。

Contents1 我慢せず生きていくための公平で安心な人間関係の作り方

人生において最も重要で厄介なものは何でしょう。著者は「人間関係」であるとしています。

他人の価値観やルールに縛られずに生きるためには、その人間関係が自分にとって「好ましいもの」であるかどうかをしっかり見極める必要があります。

好ましい人間関係はとにかく公平(フェア)で穏やかです。

P30

好ましい人間関係を増やすうえで、心がけることは、

「自分と他人の境界線をきちんと意識し、守る」こと

P33

自分の心や身体、生活、人生は、自分が責任をもって守るべき領域であり、常識や当たり前、一方的なジャッジを武器に他人の領域を侵害してはいけません。

人のトラブルを自分ごとのように感じたり、頼まれると断れず助けてしまうといった、一見優しさに見える行為も自分の領域と他人の領域の境界線があいまいになっているので注意が必要です。

この境界線がうまく機能していない人は、自責・他責傾向が強くなり生きづらさを感じてしまいます。

この境界線と自分の領域を守る方法も本書の中で具体的に紹介されています。

 ・他人からのラインオーバーに敏感になる方法
 ・領域を侵害してくる人を遠ざける3ステップ
 ・他人を嫌う感情や悪口との付き合い方
 ・謝罪をするときの注意点
 ・心が弱っているときに離れた方がいい人の特徴

Contents2 会社や社会に疲れしまった人への処方箋

こどもの頃は親や学校を主体的に選ぶことは出来ませんが、大人になってからの職場は選ぶことができ、平日の3分の1以上の時間を過ごすことになります。

職場の人間関係のルールや環境を見直すことは、必要以上に我慢をせず、自分らしく幸せな人生を送るうえで必要不可欠です。

P96

非常に残念なことに、社会には、まじめさや善良さに漬け込む不公平なトレードがあふれています。
代金に見合わない商品、恩をあだで返す、サービス残業。。。。不公平なトレードの行きつく先は「後悔」であると鈴木さんは言います。

現代の会社や社会の価値観の多くが、競争社会に基づいており、人は永遠に勝ち続けることができない以上、会社や社会が『是』とする他人都合の価値観を軸に生きていると、負けた時に後悔がやってくるのです。

人生の時間は限られています。

自分を縛っている他人のルールを断ち切り、自分のルールに基づいて生き直すタイミングは、早いに越したことはないのです。

P115

「我慢は美徳」というのは、他人に我慢してもらった方が都合がいい人たちの勝手なルールにすぎません。

P120

我慢強い日本人は、すでに我慢していても「まだ我慢が足りない」と思ってしまうそうです。

理不尽な状況から逃げ出し、新しい環境に飛び込むことに不安と恐怖を覚えると、脳はつらい状態に対する認識自体を変えようとします。つらくない、この程度は我慢できると…
我慢しているうちに、自分の本当の気持ちが分からなくなってしまうのです。
しかし、この状態はただ気持ちに蓋をしているだけで、いつか必ず爆発し、心身の不調となって表れます。

・我慢することで、自分に得られるもの(メリット)があるかどうか。そのメリットを自分が欲しいと思っているかどうか。そのメリットが、自分が支払うコスト(お金、時間、エネルギー、ストレスなど)に見合っているかどうか。

・我慢しなければならない期間が決まっているかどうか。

をきちんと吟味しましょう。

P125

吟味した結果がNOなら、NOを突きつけましょう。

また、この章では、断ることに対する罪悪感からの抜け出し方、会社や社会で「良い」とされているコースから外れても幸せに生きる方法も書かれています。

Contents3 思い込みを捨て、自分らしい人生を取り戻す

「他人や社会が決めた価値観やルール」から解き放たれ、「自分の価値観やルール」に基づいた「自分らしい人生」「自分だけの物語」を取り戻す

P29

重要性は分かっても、どうすれば自分のルールや生き方を見つけられるか不安になりますよね。

鈴木さんは、「まず自分に合わないもの、やりたくないことを見つけ、NOを言うことから始める」とよいと言われています。やりたくないことが分かれば、やりたいことも分かってくる。そうして、自分を喜ばせる時間やエネルギーをできるだけ増やしていくことで、自分らしい人生になっていくのでしょう。

やりたいことが見つからないという一因は、自分のやりたいことが他者から評価されにくいことの場合、なかなか認めることができないというところにあるそうです。自分が納得する人生を歩むには、正直な気持ちを認めることが第一歩なのです。

競争に負けようが他人からの評価が低かろうが、その人が存在することそのものの価値とは全く関係がありません。

P167

他者からの評価なんか気にしなければよいと思う人もいるかもしれませんが、自分への評価基準が高すぎるのも生きづらさにつながります

自己肯定感というものは、「完璧でなくても優秀でなくても競争に負けても、自分がこれでいい」「自分は自分であって大丈夫」という感覚のことです。

P168

競争は人生のスパイス、価値基準にしないほうが賢明であり、競争や評価とは無縁な人または世界とのつながりを大事にして、自分の「欠損している部分」をそのまま受け入れ、愛してくれる人と出会えたら最高と著者は述べています。

頼まれごとや気の進まない誘いの断り方、「だから私はダメなんだ病」の克服の仕方も詳しく書かれています。

Contents4 誰にも振り回されず、自己肯定感を保つには

自己肯定感を保つためにどうしても欠かせないもの分かりますか?

自分を一方的にジャッジせず、自分の欠損や欠点を認めてくれる、信頼できる他人の存在

P201

だそうです。まだ出会っていないという人は、

心のセンサーを研ぎ澄ませ、自分にとって心地よい人はどういう人なのか、逆に、近づいてはいけない人はどういう人なのかを少しずつ学んでいった先に、もしかしたら、「本当に信頼できる一人目の大人」との出会いが待っているかもしれません。

P211.212

問題や悩みを解決する具体的な方法として、鈴木さんがおすすめされているのは以下の方法です。

・紙に書きだす

・他人に聞いてもらう

・「身体的ニーズ」を書き出す (例)疲れているから休みたい、今○○が食べたい

Contents5 「心地良くない」「楽しくない」と感じたものは捨てていく

この章では本当に多くの人が気づかずに心を削られている数々の思い込みの例が書かれており、それが思い込みであることを知るだけでも非常に心が軽くなります。

自分に合うもの、合わないものを判別する「野生の感覚」を磨く方法も書かれておりとても参考になります。

落ち込んでいる時にやってはいけないこと、やった方がよいことも紹介されています。

この章は、これまで私が学んできた心地よい暮らしに関することの総まとめのような内容になっていて、私の要約能力では削れるところがありません。ぜひ、本書を直接読んでいただきたいと思います。

まとめ

 実は私は、結婚後、ほどなく職場異動があり、慣れない家事と仕事をこなす中、初めての子どもを授かり、「夫に迷惑をかけないように、ちゃんと家事をやらないと」「仕事相手や職場の仲間に迷惑をかけないように、ちゃんと仕事をしないと」「お腹の子どもを大切にするために、健康的な生活をしないと」という、すべてをこなすのは非常に難しい無理難題を自分に課して、心身の不調に蓋をして、大爆発を起こした一人です。あの時を経験したからこそ、この本が言っていることは信頼できると胸を張って言うことができます。生きづらさを感じているのであれば、ぜひ読んで頂きたいと思います。今は生きづらさを感じていなくても、私の人生これでいいんだっけ?という瞬間に備えて、常備薬的に読んでおいて損はない一冊です。

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